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人妻コレクション~他人に抱かれる妻たち
第24章 志津〜人妻ランナーの秘密
「ママ、今回は何キロ走るの?」

大学生になっても、息子は相変わらずママと呼んでくれる。

反抗期を終えた1人息子、元哉と会話をする頻度が、最近は随分増えた気がする。

志津にはそれが素直に嬉しかった。

「短いわよ。たった10キロだもん」

「もう10キロも走れねえな、俺」

「サッカー辞めてから、元哉もすっかり体がなまってんじゃないの?」

高校時代、サッカーに打ち込んだ息子は、この春、大学入学後、一転して軽音楽サークルに入っていた。

「すごいな、ママ」

「ハーフでもないからねえ、今回は。景色とおいしいものを楽しんでくるわ」

今年44歳になる黒崎志津。

大学卒業後、職場で出会った先輩、大輔と結婚したのは彼女がまだ24歳のとき。

すぐに生まれた息子、元哉を懸命に育てているうち、いつの間にか今になった。

志津はそんな気分だった。

夫は子育てにはあまり熱心ではなかった。

コンサルタントという固い職業に就いている夫は、日々忙しく、家族と過ごす時間もあまりなかったのだ。

「いつも申し訳ないな、元哉のことを任せきりで」

「あなた、いいの。私は大丈夫よ」

結婚後、退職した志津は、いくつかの会社で契約社員として働いたこともあったが、現在は専業主婦に戻っている。

ランニングを始めたのは5年ほど前だ。

忙しい夫のことは理解できたが、しかし志津は、いつしか心に存在する空虚な感情に気づき始めていた。

夫との会話はめっきり減り、もう何年も抱かれていない。

長男が当時反抗期を迎えていたこともあり、志津は精神的に追い込まれていた。

そんなときだ、彼女がランニングと出会ったのは。

たまたまテレビで見たランニング講座。

学生時代、テニスをやっていた志津だが、ランニングの経験などそれまでなかった。

だが、テレビに映るランナーたちは、どこか爽やかで、吹っ切れた風に見えた。

若い年代だけでなく、初めて走るという主婦ランナーもいる。

「あなた、私、ランニング始めようかと思って」

志津は、夫にそんな風に切り出した。

だが、夫のリアクションはあっさりしたものだった。

「いいんじゃないか。お前もストレス溜まってるだろう」

ひどく寂しい気分になったが、とにかく志津は決断した。

私、走ってみよう・・・

そして、志津は生まれて初めてランニングシューズを買った。
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