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人妻コレクション~他人に抱かれる妻たち
第4章 弘子~主婦一人旅での出来事
「撮影でカナダにいったとき、森でいきなりグリズリーに遭遇したんです」

「グリズリー?」

「熊ですよ。ものすごく大きな」

「まあ」

「さすがに驚きました。動けなかったです」

「それで、大丈夫だったんですか?」

「熊を見つめながら、少しずつ後ずさりをしてね。奇跡的に助かりました」

笹本の話は、弘子がまるで知らないことばかりだった。

次々に興味深い話が繰り広げられる。

その話し方には相手への気遣いが感じられる。

決して退屈させず、適度なユーモアが散りばめられていた。

楽しかった。

心の底から笑い、リラックスしたことなど、弘子は思い出すこともできなかった。

「僕ばかり話してもつまらないですよね。弘子さんの話も聞かせてください」

このバーに来たとき、弘子は改めて自分の名前を紹介していた。

彼がさりげなく名前で呼んでくれたことが、弘子はうれしかった。

「私の話なんて・・・・。退屈ですわ。平凡な主婦で、毎日同じで」

「ご主人には愛されてるんでしょう?」

突然そんなことを聞かれて、弘子は戸惑いながらも、強い調子で答えた。

「もう主人との間には愛情はないんです」

「そんなことないと思いますが」

昼間、彼が容姿を褒めてくれたことを思い出しながら、弘子は続けた。

「私がどんな服を着てるかなんて、主人はもう気にも留めてくれません」

「失礼ですが、今回のご旅行について、もう少し聞かせてもらえますか」

「とにかく・・・・、少しでもいいから、普段とは違う自分になりたくて」

「普段とは違う?」

「自分が知らない自分っていうか・・・・、うまく表現できませんが」

「わかる気がしますよ。だから、自分探しの旅、なんですね」

「ええ」

弘子は何度かカクテルをお代わりした。

心地よい酔いだった。

少しずつ夜の闇が濃くなっていく。

いつしか午後11時近くになる。

時間の経過と共に、隣に座る彼との距離が少しずつ近づいていく気がする。

今夜、この後、どうなるのだろうか。

彼もまた、このホテルに泊まっているというのだ。

やだ・・・・・、いったい何を考えているの・・・・・・・・・

困惑する弘子の心の揺れを見透かすように、笹本がそっとささやいた。

「弘子さん、明日は早いんでしょう?」
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