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アネゴ的カノジョ
第5章 陽と陰
 
「おっ、キョウちゃん大丈夫かい?」

 中年の職人の顔が視界いっぱいに広がる。


…お、おっちゃんっ……顔近いよっ………


「だ、大丈夫だって」

 瞬時に思った事は口に出さず、別の言葉を吐き出した杏子。

 横たわっていた体を起こして、笑顔を作る。

「ったく。床張ってねぇとこに落ちるなんて、気が抜けてっぞ」

 棟梁の厳しい言葉に、仕事に集中していなかった事にズキッと心を痛める。

 しかし、棟梁の表情を見れば、やはり杏子を心配していたのが窺い知れた。

「ご、ゴメンよ…。アタシ……頑張るからっ」

 無事だと見せ付けるように、勢い良く立ち上がる。

 しかし、瞬時に襲ってきた目眩に、足元がよろつく。

「ほら、無理しねぇでいいからよ。ちょっと休んどけ」

 口調は悪いながらも、労る言葉を吐き出した棟梁。

 杏子は逆らう事もなく、素直に腰を下ろした。


…昨日のアタシはアタシじゃなかったんだ………
アタシはもう………


 膝の間に頭を埋め、決意を決め込んだ杏子。

「えっ…。ちょ…ちょっとキョウちゃんっ!」

 一人の職人の慌てた声に、怪訝な表情を浮かべた顔を上げた。


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