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銀の木洩れ日亭へようこそ
第1章 君を拾う
少女はいつの間にか傍の椅子に戻っていた。
膝の上に広げた大判の書物を閉じながら、呆れたように溜息を吐く。

「どうせ世話になるなら、治ってから出て行って。後で野垂れ死んだのを見つけてしまったら気分が悪い」

「奴らが来る。時間がない…」

額に汗を浮かべ、うなされたように声を絞り出すジークの傍らに少女は跪いた。
耳元で囁くように問う。

「…その人達は、魔術師?」

青年が微かに頷くのを確認し、少女はにやりと笑みを浮かべた。

「なら安心していい。ここは魔術師には酷な森だから」

意図が伝わらず、ジークは霞のかかった目で少女を見返した。


磨き上げたルビーのような瞳。


綺麗な深紅…

焦点の定まらない目でうっかり見惚れていると、少女はジークの鼻先を指でちょんと突いた。

「ゆっくりおやすみ」


世界が、暗転した。









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