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可愛いヒモの育て方。
第6章 いざ、温泉旅行へ!

 自販機の陰から盗み見ると、見慣れているはずの彼の横顔が見える。私の知らない顔だった。

「――あのさ」

 相手の言葉を遮るように、麻人はそう発した。

「そんなことで、わざわざ電話してこなくていいから。あんたのやることに、俺が口出ししたことあった? 好きにしていいよ」

 通話はそこで終了したらしく、麻人は携帯をポケットへとしまった。
 好きにしていいよ。それは普段から、麻人がよく使う言葉だった。最終的な選択を、相手に委ねる時に。だけど今のは違う。声のトーンやニュアンスでわかる。
 拒絶。殺伐とした、ただ一方的な。
 通話を終えた麻人が歩き出すのが、スリッパの音でわかった。だけど私は自販機の横に立ちつくしたまま、動けずにいた。

「友梨香さん?」

 はっとして、我に返った。私の姿に気付いた麻人が、驚いたように立ち止まって私を見ている。

「部屋……、わかんなくなっちゃって」

 我ながら、かなり苦しい言い訳だった。浴場からは戻れてたわけだし、自販機の陰に隠れるように立っていたんだから、通話を盗み聞きしていたのもバレているはずだ。
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