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第9章 夢

　ずいぶん昔、彩乃に言われた言葉がある。

「過去の恋愛が原因で、ちゃんと恋愛できなくなっちゃうケースって、わりとよくあるんだって。遊ばれたり、裏切られたり、体だけ狙われたり、そういうのがトラウマみたいになって、次の恋愛に行けないケース。――友梨香は？　平気？　マサルさんのこととか」
「平気って？　トラウマなんてあるわけないじゃん。だいたいあいつと付き合ってたの、もう何年も前だし。今さら関係ないよ」

　どこで話してたかも、覚えていない。地元のファミレスだった気がする。
　何人めかの彼氏と別れ、一夜限りの遊びに手を出し始めた頃だった。
　あの頃はセックスが楽しくて、仕方なかった。いろんなエッチをしてみたくて、ネットで知り合った男と気が向けば会ってホテルに行った。だけどおかしなもので、性欲はいつもみなぎるくらいにあったのに、あまり濡れなくなった。
　それを冗談半分に、彩乃に愚痴った時だった。

「ならいいけど。もうやめたら？　そういう遊び」
「やだよ、もっといろんなエッチしてみたいもん。年下が最近アツいんだよね。なんか、慣れてない感じが可愛くて」