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可愛いヒモの育て方。
第11章 依存
『麻人、電話に出て……お願い、麻人っ』
留守電が終わる。次を選択し、耳に当てた。
『ねえ、そこにいるんでしょ? なんで無視するの? ねえ、麻人! 麻人っ』
名前を呼び続ける声。ふいにそれがピタリと止み、嗚咽が洩れだした。
『麻人ぉ……』
悲壮な声。留守電が切れた。私は一度躊躇し、再び次の留守電を聞いた。
最初は長い沈黙だった。息を吸う音が聞こえ、やがてそれは叫びになった。
『麻人ぉ! なんで……なんでそばにいてくれないの! なんで私を独りにするの! 麻人ぉぉ! 今すぐきて! ねえ、麻――』
ぷっつりと途絶えた音声。事務的な機会音。私は震える手で次を押した。
『――の人みたいに私を置いてくの!? 独りにしないで! 麻人、麻人ぉぉ!』
鼓膜をつんざく金切り声。留守電越しの相手は、もうほとんど正気じゃなかった。すすり泣きながら叫ぶのみ。麻人の名前をひたすら呼んでいた。
私はこの尋常じゃない相手の様子に、背筋を冷たい何かが這うのを感じた。麻人の恋人や元カノが逆上しているならまだわかる。