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可愛いヒモの育て方。
第5章 熱

 ベッドから立ち上がろうとする麻人を、私は止めた。

「ダメだって。熱あるのに運転とか危ないし。誰もいない家に戻ってなんかあったらどうすんの。せめて病院くらい付き添うよ」
「友梨香さんは俺を子供扱いしすぎなんすって。ちょっと風邪気味なだけだし大丈夫ですよ」
「風邪舐めんなよ、今時のウイルスはなかなか手ごわいんだからね」
「怪獣みたいに言わないでくださいよ」

 私は彼の体を、再びベッドへと押し倒した。

「言うこと聞かないと襲うよ」
「…………痴女。右半分だけ化粧した顔で迫らないでください。ガチで怖い」
「もう! まだ途中なの!」

 私は定位置に戻って再び化粧を再開する。いつも化粧なんてそんなにしないけど、今日は部長が来るし、身だしなみはしっかりしないとまずい。

「だって移したら悪いじゃん」
「大丈夫、私馬鹿だから風邪引かない! だいたい隣で寝てたんだから、移るならとっくに移ってるよ」
「……そうかもしれないですけどー」

 私は眉を描きながら、時間を確認した。起きた時間がギリなのもあり、何かを作ったり買ってきたりする時間まではない。
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