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執事とお嬢様の禁断の模様
第4章 更なる山道

「………」

「…沙耶香?」

「……私ね、思ったの…」



 沙耶香は遠くを見るように、前をまっすぐ見た。



「妃奈浬みたいに上手くいくことだって…まぁ珍しいとは思うけど、
あると思うの。でも……」


 沙耶香は真顔で、やけに静かな目で、目を伏せた。



「……実らない恋も、あるんじゃないかって」

「っ…?!」


 沙耶香、どうしたの…?


「待って、沙耶香…なんか、変だよ…」

「ううん、きっと私はもう、ダメだと思う」

「そんな…ねぇ、沙耶香、なにがあったの?」

「………」


 沙耶香はさっきから私を見ない。

 思いつめているのか、もう決断したのかよくわからない瞳で、
沙耶香はじっと黙っている。


 私はますます心配になった。


「お願い…教えて」

「……実はね」

「うん……」



 私は緊張しながら、沙耶香の言葉を待った。


 悲しそうな瞳で、悲しそうな声で、笑いながら沙耶香は言葉をつむぐ。








「………孝博さんね、婚約者ができちゃったの……――」



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