パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第4章 更なる山道

「…秀一に話していいかどうかも…
わからないんだけど。
多分、大丈夫だと思うから話すね」

「ええ…」

「実は…ね。今日、沙耶香に
聞いたんだけど…孝博さんにね、
昔からいた婚約者が現れたんだって…」

「婚約者が…？」

「うん…秀一は、知ってる？」

「いいえ…聞いたことはありませんが」

「そっか…」



　秀一は孝博さんとは幼なじみだから、
知ってると思ったんだけど……



「証拠はあるらしいし、なにも知らない
私が言うのもなんだけど…

なんか違和感を感じるの。仕組まれたような…。

このままじゃ沙耶香がかわいそう…
婚約を取り消すことってできないの？」

「できるにはできますが…まず、
お互いと、お互いの親御さんの了承が必要です。

ですから、その方が婚約を取りやめる
とでも言い出さない限りは、無理かと…」



　無理なんて…そんなの認めたくない。


　私は顔を上げ、秀一を見つめた。



「できないの…？　
相手が不正をしてたりしてても？」

「それは…証拠があれば可能かも
しれませんが…。調べましょうか？」

「…じゃあ、お願い」

「かしこまりました」



　私は秀一の背中に腕を回し、抱きつく。

　お互いの身体が密着する。



「秀一…ごめんね」

「……？」

「我慢するの…辛いかもしれない
けど、今日はこのまま…」

「……かしこまりました」



　秀一は優しく、私の背中に腕を回してくれた。



「…ありがとう」



　私はそのまましばらく、浅葱に抱きついていた。