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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第12章 第一部・第三話 【月戀桜~つきこいざくら~】 十六夜の月
「滅法強い男ですよ。それに、あたしもこの娘は気に入ってるんです、年上の男の妾になって一生、日陰の身で終わるのは、あたしだけで十分ですからね。旦那ももう良い加減、好き心を動かすのも大概になさって下さいよ」
肥前屋は女のように細くて長い指を顎に添え、唸った。
「それは残念なことだねぇ。小紅さんのような少女を手活けの花としてこれからの生涯を過ごすのも堪らない男の悦楽―」