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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第12章 第一部・第三話 【月戀桜~つきこいざくら~】 十六夜の月
更に小紅はあずかり知らぬことだったが、肥前屋はもう十年も前に女房を亡くしている。その時、当然ながら、後添えを迎える話も出たし、肥前屋は長年陰から尽くしてきた美桜にこの際、肥前屋に正式に入るように言葉を尽くしたのである。
しかし、美桜は最後まで正式な妻となることを承知しなかった。
―あたしは十三のときから苦界で生きてきた女です。今更、堅気の、しかも大店の女房なんて気詰まりで、到底やってられませんよ。
しかし、美桜は最後まで正式な妻となることを承知しなかった。
―あたしは十三のときから苦界で生きてきた女です。今更、堅気の、しかも大店の女房なんて気詰まりで、到底やってられませんよ。