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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第12章 第一部・第三話 【月戀桜~つきこいざくら~】 十六夜の月
 その先に何があるのか知りたいような、知りたくないような相反する気持ちが小紅にはあった。
 暦は既に三月に変わっている。ふっくらとした盈月が清かな光を放ち、地上を照らしていた。栄佐の姿はやがて行き止まりになった道の向こうに吸い込まれた。その後をついていった小紅は思わず息を呑んだ。行き止まりになった道の先には短い石段が続き、その先には荒れ果てた寺があった。
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