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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜
 それが難波屋武平の倅、難波屋の跡取りというだけで大きな顔をして、この若さで吉原遊廓に出入りし、大店の旦那衆のように遊興に耽るというのだから呆れて物も言えない。こんな器の小さな男が自分の未来の良人となるのかと思うと、つくづく情けなかった。
「どういう意味―」
 言いかけて、小紅はハッとした。もしかして、後ろから見られていた?
 蒼褪める小紅とは裏腹に、準平はさも面白そうに嫌らしげな笑いを浮かべている。
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