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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第13章 第一部第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 龍馬という男
龍馬に初めて逢ったのはひと月も前である。と、龍馬は笑顔で返した。
「別に故郷(くに)に帰っても、待ってくれよる妻子がおるわけでもないきにのう。折角花の江戸に出てきたんじゃ、気の済むまでおるつもりで、物見遊山したり、知り合いを訪ねている」
「そうでしたか。私はてっきり、もうお国に戻られたとばかり」
「何か俺が江戸におっちゃあ、悪いような言い方じゃのう」
「そんなつもりで申し上げたのではありません。お気に障りましたなら、お許し下さい」
「別に故郷(くに)に帰っても、待ってくれよる妻子がおるわけでもないきにのう。折角花の江戸に出てきたんじゃ、気の済むまでおるつもりで、物見遊山したり、知り合いを訪ねている」
「そうでしたか。私はてっきり、もうお国に戻られたとばかり」
「何か俺が江戸におっちゃあ、悪いような言い方じゃのう」
「そんなつもりで申し上げたのではありません。お気に障りましたなら、お許し下さい」