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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第13章 第一部第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 龍馬という男
「俺は見かけどおり、たいした力もない頼りない男じゃけど、何なり話してくれたら、ちったァ小紅どのの力になれるかもしれん。もちろん、小紅どのが話したくないというのなら、無理に訊き出そうとまでは思わんけど、良かったら、話してみんか? 人間、悩みを吐き出すだけで心が軽うなるもんじゃけんのう」
 小紅はそれでもなお躊躇った。龍馬の漆黒の瞳が無心にこちらを見ている。星を浮かべた夜空のような瞳には何の邪心もなかった。見返りすら期待していないだろう。
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