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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第14章 第一部・第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 熾火(おきび)
「来月初めの競りが済んだら、俺はあの任務から外して貰うことになっている。そうしたら、大枚が手に入るんだ。俺はそれを持って、お前を連れて江戸を出る。大坂に行くつもりだ。もう江戸になんざァ、いたくねえんだ。ここにいたら、俺は気が狂っちまう。寝ても覚めても芝居のことばかりが頭に渦巻いて、気がつけば脚は勝手に芝居小屋の方に向かってる。けど、俺は一生、しがない大部屋役者はいやだ。なのに、すっぱりと諦めもつかねえで、俺は俺は」