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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第14章 第一部・第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 熾火(おきび)
一方、龍馬に抱えられ長屋から連れ出された小紅は涙が止まらなかった。龍馬は隣の小紅の住まいまで彼女を連れてくると、そっと壊れ物を扱うような慎重な手つきで降ろした。
「頼むから、そんなに泣かんといてくれ。何ちゃ俺が悪者になったような気がするきいに」
どうやら女性の涙がかなりの苦手らしい龍馬は先刻の毅然とした佇まいが嘘のようだ。おろおろと病気の子どもを前にした親のように狼狽えている。
「頼むから、そんなに泣かんといてくれ。何ちゃ俺が悪者になったような気がするきいに」
どうやら女性の涙がかなりの苦手らしい龍馬は先刻の毅然とした佇まいが嘘のようだ。おろおろと病気の子どもを前にした親のように狼狽えている。