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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第15章 第一部第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 すれ違い
しかし、清国を相手に対等に物が言えるとなれば―。小紅はヒュッと息を呑んだ。
「薩摩の島津さま辺りが?」
龍馬がもう一度、シッと叫んだ。
「迂闊なことを言いなや。小紅どの、そこまでじゃ。おまんはもうそれ以上は知らん方がええ。利口すぎるおなごにも困りもんじゃのう。大物は島津さま縁(ゆかり)の武家とだけ言うておく。おまんの惚れた男を助けるのに、それは関係なかろう」
「判りました」