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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第16章 【戀月桜~つきこいざくら~】決着~安政六年四月五日宗徳寺
このままでは龍馬が斬られてしまう。小紅は気が気ではなかった。そのときだった。カァシーンとひときわ高い音がその場に響き渡り、龍馬の剣がはじき飛ばされた。弧を描いて飛んでゆく剣に客の男たちがざわめき、怯える。
もう、駄目。
小紅は眼を閉じた。浪人の一人が龍馬が得物を失った隙を狙い、斬りかかっていったのである。いかに龍馬といえども、素手で刀に立ち向かうのは無理があるだろう。