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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第16章 【戀月桜~つきこいざくら~】決着~安政六年四月五日宗徳寺 
 龍馬死す、の悲報を小紅が聞いたのは実にこの八年後のことであった。その時、小紅が思い浮かべたのは、人懐っこい笑顔と星を宿した夜空のように澄んだ双眸であった。
―俺は余計な殺し合いや憎み合いは嫌いじゃ。今の世の中、物騒なことも多いけんど、最後に人を助けるのはハートじゃと思うとる。
 旅立ちの日に龍馬が見せた晴れやかな笑顔が余計に小紅の涙を誘った。
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