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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜
「太吉さん、滅多なことを言うものではないことよ。商家の奉公人というものは、奉公先のお店(たな)についての内情は軽々しく他人に喋ってはいけないの。太吉さんは利口だから、私の言うことが判るでしょ」
「判りました、申し訳ありません」
 太吉はペコリと頭を下げた。
「判ったら良いの」
 もう一度太吉の頭を撫でると、太吉は言った。
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