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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第20章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 定命
だが、栄佐は死力を賭してお家を守った重臣たちを足蹴にした。十六歳になった時、自ら角倉の家と八千石の当主であるという立場も捨て去ったのだ。
―殿、どうか我らをお見捨て下さいますな。殿がおられねば、この角倉のお家はご公儀からお取り潰しの沙汰を受けるは必定。
老いた用人が取り縋ってくるのを彼は振り切って、屋敷を飛び出した。あのときの源五の哀しげな声を栄佐はいまだに忘れられない。