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第20章 第二部・第四話【悲願花～女になった男～】　定命　　

　更に栄佐はもう一つの貌を持っている。それは腕の良い鍼医の顔だ。貧しい患者からは代は取らず、高直な治療費や薬代を取るそこそこ名の知れた町医者よりはよほど診立ても確かだと評判の医者であった。
　そんな彼はまだ栄之進であった頃から、やはり度々、屋敷を抜け出しては気随気儘に駆け回っていたという一面があったのである。二つ上の輿平太とはその時分に出逢った。幾ら身なりをやつしても、着物も袴も上物を着ているし、やはり、彼には自ずから備わった気品というものがあった。