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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第22章 第二部・第五話 【冬柿】 予兆
 栄佐は小首を傾げ、少し離れた後方から、その男の様子を見守った。件(くだん)の男は先刻から長屋の前を行きつ戻りつした挙げ句、今度は小紅(おこう)の住まいの前にぴったり張り付いている。内の様子を探ろうとするかのように表の腰高障子越しに聞き耳を立てたりと、明らかに挙動不審だ。
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