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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第22章 第二部・第五話 【冬柿】 予兆
 小紅は元々は江戸でも指折りの呉服太物問屋の娘だった。それが、主人の父仁助が若い女と手に手を取って駆け落ち、上州屋は数代続いた老舗の暖簾を閉めることになった。
 小紅は仁助の残した膨大な借金を背負い、吉原遊廓に身を沈めるしかなかったのだ。が、仁助の実弟である難波屋武平がその急難を救った。武平はすべての借金を肩代わりしたばかりか、小紅を引き取った。自らの義理の息子順平と婚約させようとしたが、その前に若くして急死した。
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