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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第22章 第二部・第五話 【冬柿】 予兆
「助蔵爺さんも寄る年波かな、最近は滅法元気がなくなっちまったぜ。何でも来年の春には店を畳んで本所の倅夫婦のところに身を寄せるって話してたな」
小紅はまだ頬を赤らめたまま、話を合わせるしかない。
「じゃあ、春には助蔵さんはいなくなるの?」
助蔵というのは木戸番の老人だ。年の頃は六十そこそこだが、持病の神経痛があり、冬が来る度に寝込むほど足腰が痛む。そんなときには栄佐の針がいちばん効くと話している患者の一人でもある。
小紅はまだ頬を赤らめたまま、話を合わせるしかない。
「じゃあ、春には助蔵さんはいなくなるの?」
助蔵というのは木戸番の老人だ。年の頃は六十そこそこだが、持病の神経痛があり、冬が来る度に寝込むほど足腰が痛む。そんなときには栄佐の針がいちばん効くと話している患者の一人でもある。