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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜
「お前が男は皆、遊廓が好きなのかと訊ねたただろう。あの応えだ。小紅ちゃん、確かに世の大部分の男は―いや、正直に言えば、この私も含めてすべての男は色事も女も好きだよ。衆道を特に好む変わり者は別として、普通なら女を嫌いな男なんていないはずだ。だが、かといって、その全員が吉原に行くとは限らないし、登楼して女郎を抱くかどうかは判らない。女を好きなのと、現実に女房以外の女を抱くかどうかはまた別次元の話さ。私に限っていえば、縁の糸を大切にしたいから、特に吉原の女を抱きたいと思ったことはない」