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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第24章 第二部第五話 【冬柿】 父と娘
 これといって探す当てはなかった。しかし、ふと思いついたのが近くの和泉川であった。長屋からもいちばん近く、川といえば最初に閃いたのがその場所だったのである。
「とっつぁん、馬鹿な真似だけはしねえでくれよ」
 栄佐は祈るような気持ちで走りに走った。もし今、仁助の身に何かあれば、小紅はどれだけ哀しみ、自分を責めるだろう。最悪、自分も父親の後を追おうとするかもしれない。自分が父親を罵ったことが父を死に追いやったと一生苦しみ続けるに違いなかった。
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