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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第24章 第二部第五話 【冬柿】 父と娘
「ほら」
 彼が指した方向には、橋のたもとで屋台を出している煮売り屋があった。丁度、松平さまのお屋敷の前だ。
 あ、と、小紅も眼を見開いた。
 仁助がこざっぱりとした姿で前垂れをかけ、客らしい同年配の男と親しげに言葉を交わしている。客が注文した豆を竹包みに入れ、愛想よく送り出した。
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