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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第25章 第二部・第六話【春咲く花】 再会
小紅との祝言を間近に控え、幸せの絶頂にいるはずの栄佐だが、一つだけ気掛かりがあった。むしろそれは日が経つにつれて、彼の心に嵐を告げる前触れの黒雲のようにじわじわとひろがってゆくのだ。
去年の秋も深まった頃から、ずっと自分の背後を付かず離れず追いかけてくる脚音と黒い影。その正体を栄佐は知っている。しかも年が明けてから、三日に一度ほど感じていたその気配を終始身近に感じるようになった。