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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第25章 第二部・第六話【春咲く花】 再会
爺と呼んで実の両親よりも慕った源五を振り切って屋敷を飛び出したあの瞬間、角倉栄之進という侍は死に、この世からいなくなった。今の栄佐は武士でも何でもない、ただの町人栄佐だ。
しかし、去年の秋辺りから自分の身辺をあるときは窺い、あるときは警護するかのように貼り付いている影の正体が爺の手の者だとすれば、いよいよ角倉家にも危急存亡のときが来たのだろう。つまり、当主不在をこれ以上、ごまかせなくなったということだ。
しかし、去年の秋辺りから自分の身辺をあるときは窺い、あるときは警護するかのように貼り付いている影の正体が爺の手の者だとすれば、いよいよ角倉家にも危急存亡のときが来たのだろう。つまり、当主不在をこれ以上、ごまかせなくなったということだ。