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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第25章 第二部・第六話【春咲く花】 再会
「ご健勝なご様子、何よりと拝察仕ります」
老人の皺深い眼には光るものがあった。元から大柄な男ではなかったが、しばらく見ない間に随分と痩せて小さくなった。確か今は六十過ぎのはずだが、ちょっと見には七十どころか八十近いようにも見える。十年前にはまだわずかに黒いものが残っていた髪は真っ白になっていた。
すべては己れのせいだと栄佐は判っていた。源五の制止を振り切って屋敷を飛び出した日から、この小柄な爺にすべてを背負わせてしまったのは他ならぬ自分だ。
老人の皺深い眼には光るものがあった。元から大柄な男ではなかったが、しばらく見ない間に随分と痩せて小さくなった。確か今は六十過ぎのはずだが、ちょっと見には七十どころか八十近いようにも見える。十年前にはまだわずかに黒いものが残っていた髪は真っ白になっていた。
すべては己れのせいだと栄佐は判っていた。源五の制止を振り切って屋敷を飛び出した日から、この小柄な爺にすべてを背負わせてしまったのは他ならぬ自分だ。