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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第25章 第二部・第六話【春咲く花】 再会
「まだお判りになりませぬか。弥次郎君は確かに先代の殿のご子息、それは重々承知しております。さりながら、我ら家臣一同が重きを置いているのはお生まれではなく、当主としての器にございます。殿はご幼少の砌から、ご英明の聞こえも高く名君とならるるお方、何故、そのようなお方を当主に頂きながら、次の当主を立てなければならぬのですか? 僭越ながら、弥次郎君他、他のお二人の弟君のどなたにも角倉家の当主の重責は重すぎる。