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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第26章 第二部・第六話【春咲く花】 略奪
 明日からは小紅が店に出なくなるせいか、栄佐の機嫌はすっかり良くなっていた。店を閉めるのはいつも夕刻、暮れ六ツの鐘が鳴る刻限だ。冬の暮れ六ツはまだまだ陽が落ちるのが早い。なので、栄佐は芝居小屋を少し早めに出て帰りに茶店に寄って、店を閉めた小紅を連れて長屋に戻るようにしていた。もちろん、小紅に夜道の一人歩きをさせないためである。
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