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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち
「で、その辻占い師っていうのが十八、九の凄ぇ美人で、これがおまけによく当たるのさ」
 手代の新吉が声高に興奮した面持ちで喋っているのが聞こえる。
「何だ、手前は占いそのものより、その美人の占い師の方が目当てで通ってるんじゃねえのか」
 二番番頭が若い手代をはやし立てている。
 小紅はそんな賑やかなやりとりを聞きながら、そっと踵を返した。自室に戻る途中で運良くお琴に出くわしたので、問うてみる。
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