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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第26章 第二部・第六話【春咲く花】 略奪
しかも、あれほど言われたのに約束を破って一人で先に帰ってしまった。その挙げ句がこの体たらくだ。
栄佐さん、ごめんなさい。私、今度こそ駄目かもしれない。
すべては栄佐の言いつけを守らなかった自分のせい。小紅は心で栄佐に詫びた。しかし、刺客は何故か小紅を殺そうとはしなかった。口許にやわらかな布きれを押しつけられ、小紅はもがいた。ツンとした異臭が鼻腔を刺激するとともに、ふうっと意識が遠のいてゆく。