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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第26章 第二部・第六話【春咲く花】 略奪
その四半刻後、栄佐は閉めきった茶店の前で茫然と立ち尽くしていた。
「畜生、あいつ、何で俺の言うことを聞かなかったんだ?」
栄佐は歯がみして、とりあえず長屋に戻ることにした。小紅が長屋に戻るとすれば、この道を通るはずで、既に先に帰っている可能性もある。少し歩くと、直に出合茶屋が軒を連ねている風景が見えてきた。見かけは小体な料理屋のようだが、その実、男女がひそかな逢い引きに使う出合茶屋として営業している。
「畜生、あいつ、何で俺の言うことを聞かなかったんだ?」
栄佐は歯がみして、とりあえず長屋に戻ることにした。小紅が長屋に戻るとすれば、この道を通るはずで、既に先に帰っている可能性もある。少し歩くと、直に出合茶屋が軒を連ねている風景が見えてきた。見かけは小体な料理屋のようだが、その実、男女がひそかな逢い引きに使う出合茶屋として営業している。