この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第26章 第二部・第六話【春咲く花】 略奪
だが、栄佐自身はそう思っていても、角倉栄之進の亡霊はどこまでも自分についてくる。現に今回は彼の愛しい女が家中の者に生命を狙われているではないか。過去は幾ら断ち切ろうとしても断ち切れないものなのか。栄佐は今、小紅に何もしてやれぬ―愛する女一人を守り得ぬ不甲斐ない我が身が厭わしかった。
かすかな期待はすぐに打ち砕かれた。長屋はもぬけの殻だった。灯りもついてない。念のために斜向かいのおしかに訊いても、小紅が帰った形跡はないとのことだった。
かすかな期待はすぐに打ち砕かれた。長屋はもぬけの殻だった。灯りもついてない。念のために斜向かいのおしかに訊いても、小紅が帰った形跡はないとのことだった。