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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第1章 【残り菊~小紅と碧天】 始まりは雨
無一文となった小紅に最早、使用人を雇うゆとりはない。おさわは給金は要らないと言ってくれるが、一緒に暮らすのにも食べ代がかかる。それでなくとも負担を強いている叔父にこれ以上、乳母まで面倒を見て欲しいとは言えず、ここでおさわとは泣く泣く別れることになった。
おさわは独り身である。若い頃に上州屋の手代と所帯を持ったらしいが、良人は早くに亡くなったそうだ。子どももいないから、その分、余計に小紅を慈しんだのだろう。
おさわは独り身である。若い頃に上州屋の手代と所帯を持ったらしいが、良人は早くに亡くなったそうだ。子どももいないから、その分、余計に小紅を慈しんだのだろう。