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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第26章 第二部・第六話【春咲く花】 略奪
その瞬間、瑞容院の美しい顔が強ばった。そのときだけ、到底二十六歳になる息子がいるとは思えない若々しく華やいだ美貌が歳相応に見えた。
「お待ちなさい、栄之進。そなたはこの父上や角倉家歴代当主のご位牌を見ても、まだそのようなうつけたことが言えるのですか!」
母の声に、栄佐は振り向いた。その視線の先、座敷の上手には大きな仏壇があり、瑞容院の言うように角倉家の代々の当主の位牌がひっそりと安置されている。
「お待ちなさい、栄之進。そなたはこの父上や角倉家歴代当主のご位牌を見ても、まだそのようなうつけたことが言えるのですか!」
母の声に、栄佐は振り向いた。その視線の先、座敷の上手には大きな仏壇があり、瑞容院の言うように角倉家の代々の当主の位牌がひっそりと安置されている。