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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち
 侍は示談に応じ、武平は相応の金子を慰謝料として支払うことになった。そのお陰で、侍はけしてこのことを公儀には届けないと証文まで書いてくれた。
 どう見ても準平とさほど歳の変わらぬ武士は帰り際、
―お前には勿体ないほどの父親だ。せいぜい親父どのに感謝するんだな。
 ただの棄て科白だけとは思えない言葉を投げていった。
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