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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第27章 第二部・第六話【春咲く花】 逢瀬
二人がそこを発ったのは丁度、朝陽が昇り始める頃だった。東の空を黎明の色に染めながら昇りゆく太陽を小紅は栄佐の腕に抱かれて馬上で眺めることになった。
禍々しい血の色に染まった落日を不安な想いで眺めたのはつい昨日のことなのに、もう随分と昔の出来事のように思えてならない。小紅が不思議な感慨に囚われていると、栄佐が静かな声音で問うた。
「何を考えている?」
「また栄佐さんと一緒にいられるんだなと思って」
禍々しい血の色に染まった落日を不安な想いで眺めたのはつい昨日のことなのに、もう随分と昔の出来事のように思えてならない。小紅が不思議な感慨に囚われていると、栄佐が静かな声音で問うた。
「何を考えている?」
「また栄佐さんと一緒にいられるんだなと思って」