この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第28章 第二部・第六話【春咲く花】 春咲く花
最初、笈馬をどのように呼ぶべきか、小紅は迷いがあった。はるかに年上の人に対して〝笈馬さま〟もないだろう。呼び方に困っていたら、栄佐がこんなことを言った。
―小紅は俺の妻なのだから、お前にとってもお祖父さまはお祖父さまだろう。
その鶴の一声で、小紅もまた笈馬を〝お祖父さま〟と呼ぶようになったのであった。一度、〝ご隠居さま〟と呼んだら、これには笈馬自身が真顔で止めてくれと言った。
―ご隠居などと呼ばれた暁には、それこそ一挙に老け込みそうじゃからの。
―小紅は俺の妻なのだから、お前にとってもお祖父さまはお祖父さまだろう。
その鶴の一声で、小紅もまた笈馬を〝お祖父さま〟と呼ぶようになったのであった。一度、〝ご隠居さま〟と呼んだら、これには笈馬自身が真顔で止めてくれと言った。
―ご隠居などと呼ばれた暁には、それこそ一挙に老け込みそうじゃからの。