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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第28章 第二部・第六話【春咲く花】 春咲く花
「よくぞご決意なされ申した。それでこそ、我がお育てした栄之進君であらせられる。小紅どののおっしゃることに間違いはござりませぬ。殿は角倉家八千石を継ぐべくしてお生まれになったお方、殿が生きておゆきになる場所はここしかございません。小紅どのは心映えも優れたる女人、殿がひとかたならずご寵愛あそばされるのも判ります。ただ、女人の色香に迷って、人生の大事を決めるこのときに判断を誤ってはなりません」
「爺、小紅の色香に迷ったのではない。俺はあの者の気性を愛したのだ」
「爺、小紅の色香に迷ったのではない。俺はあの者の気性を愛したのだ」