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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち
と、突如として障子が音を立てて荒々しく開いた。
「やはり、お前は親父とできてたんだな」
準平が冷め切った表情で立っていた。到底、瀕死の床に伏している父親を見つめる息子の眼とは思えないほど、冷徹な瞳。その冷えたまなざしが今度は小紅に向けられる。
一瞬、素肌を蛇が這ったかのように、ゾワリと鳥肌が立つ。
いつから武平と自分の話を聞いていたのだろう。だが、この際、小紅にとってはどうでも良い話であった。