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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち
 小紅は怒りと恥ずかしさに身体が熱くなった。あまりに唇を噛んだので、血の味が口中にひろがる。しかし、そうでもしていなければ、小紅は何か訳の判らないことを喚き出しそうで堪らなかった。
 武平が必死に守り続けたものは一体、何だったのだろう。我が身を犠牲にし続けて守ってきたものが、これなのだろうか? それでは、叔父があまりに可哀想すぎた。
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