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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち
「旦那さまは跡取りであるあなたに、もっとしっかりとして欲しいと願われていました。旦那さま亡き今、あなたはこの難波屋の主人です。旦那さまが生前なさっていたことすべて、きちんと憶えて、やって頂きたいと思います」
「へえ、早くも女房気取りで俺に命令するのか」
 小紅はキッと準平を睨んだ。
「私はあなたと結婚するつもりはありません」
「―何だって?」
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