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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち
 しかし、それが限界であった。既に火の付いていた準平は不安に怯える少女を宥めてやるだけの余裕はなかった。
 準平が飛びかかってくる寸前、小紅は泣き叫んだ。
「いやーっ」
 夢中で漆黒の髪に挿していた簪を抜き、それを男にひと突きした。丁度、押し倒される間際だったので、簪の切っ先は準平の右上腕に刺さった。
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