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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第1章 【残り菊~小紅と碧天】 始まりは雨
武平の営む難波屋は日本橋通(とおり)油町(あぶらまち)にある。もちろん叔父の家だから、幼い頃から父に連れられて訪れたことはあったけれど、実は長居をした試しはない。
というのも、叔父の女房であるおきさをどうしても好きになれなかったからだ。おきさはこれといって目立つような女ではないが、とにかく性格のきつい女であった。一人息子の準平を猫かわいがりして、使用人には冷たく当たる。必然的に使用人たちの間でのおきさの評判も芳しいものではなかった。
というのも、叔父の女房であるおきさをどうしても好きになれなかったからだ。おきさはこれといって目立つような女ではないが、とにかく性格のきつい女であった。一人息子の準平を猫かわいがりして、使用人には冷たく当たる。必然的に使用人たちの間でのおきさの評判も芳しいものではなかった。